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「焼付塗装とは?」-5分でわかる用語解説。特徴からメリットやデメリットまで

塗装

こんにちはwithHOPEの塩原です。

今回は私も自動車メーカーで自動車のボディ開発に携わっていた時に扱う事があった馴染みのある焼付塗装について解説していきたいと思います。

塗装のなかでもポピュラーな塗装方法ですので良く聞くことがある塗装方法です。
他の塗装方法とも比較しながら出来るだけ解り易く説明してきたいと思います。

焼付塗装とは?

塗装というとペンキを塗ってから時間を置いて空気に当てて乾かす事を想像される方も多くいらっしゃると思いますが、これに熱風を当てる事で速く乾かすことも出来ます。

この熱風の温度がおよそ100℃以下である時にこの乾燥作業の事を強制乾燥と呼びます。これは塗料の中の希釈溶剤を早く抜く事で乾燥を早めるために行います。

熱風の温度が100℃を超えて200℃以下の場合に焼付塗装と呼ばれることになります。これは塗料の中の希釈溶剤を抜くという意味もありますが、塗料の樹脂成分に化学反応を起こすことでさらに早く乾燥を終わらせる目的があります。

この化学反応のことを熱重合反応と呼び、モノマーと呼ばれる簡単に言うと短い状態の分子が長い状態の分子に変化する反応の事を言い、鎖状に例えられるように複雑に入り組んだ状態で固定されることで強靭な状態に変化することです。

専用の塗料が必要になり一般のホームセンター等には基本的には出回っていないため、専門の商社やメーカーから購入することで焼付塗装専用の塗料を入手します。

また熱で硬化させる以外に2液を混合して化学的に硬化させる「2液型塗装」や光により硬化させる「光硬化塗装」という方法があります。

硬化方法による主な違いとしては硬化時間にあり焼付塗装は光硬化塗装に次いで早く硬化させられる事が特徴の一つとして挙げられます。

硬化の方法焼付塗装強制乾燥自然乾燥2液型塗装光硬化塗装
硬化時間×

参考HP:重合反応|研究用語辞典|研究.net

焼付塗装の種類

焼付塗装は樹脂の材料別に5種類の塗料があります。
それぞれ外観や硬度、対候性に違いがるあので適切な選択が必要となります。

メラミン焼付塗装

焼付塗装の中で最も多く使われる塗装方法がメラミン焼付塗装になります。

メラミン樹脂を使用しており、特徴としては艶があり膜厚を厚くしやすいので高級感のある仕上がりに出来るという事です。
ただし、太陽光に含まれる紫外線で劣化するため屋内での使用に限られてしまいます。

低目の温度で焼付られることからも広く利用されている塗装方法となります。

メラミン焼付塗装の詳細

アクリル焼付塗装

アクリル樹脂を主原料とした塗料を用いる塗装方法です。

メラミンよりも対候性に優れており自動販売機など屋外で使われることも多くあります。
希釈が簡単な事から個人でも多く使われています。

一方で焼付の温度が高めであり膜厚が高くなりすぎてしまうなど扱いずらい一面もあるので注意が必要です。

価格としてはメラミンよりも割高な塗装方法となります。

エポキシ焼付塗装

接着剤などにも使われるエポキシ樹脂を主原料とした塗料を用いる塗装方法です。

密着性が良く粘り強さがあるものの対候性が低いため錆止め用の下塗りとして利用さる事が多い塗装です。船の船体など錆ては困る場所などに使われています。

一方で主原料であるビスフェノールAは洗剤や高温の液体で溶け出し人の体に影響を与える可能性がある事が解っており使用する用途には注意が必要である。

フッ素焼付塗装

化学的に安定した特徴を持つフッ素樹脂を含有した塗料を用いた焼付塗装方法になります。

一番の特徴は紫外線に強く外壁塗装に用いた場合にはメンテナンスの間隔を長くすることが出来るということです。高層ビルやドームや駅などの大型建築におけるメンテナンスがし辛い場所に多く使われます。

塗料の価格が高くなるため限られた場所で利用されることが多くあります。

シリコン焼付塗装

シリコン樹脂を主原料とした塗料を用いる塗装方法です。

最大の特徴は耐熱性で200℃程度でも安定しているため高温になる場所で使うことできます。

自動車の排気部品やキッチンの耐熱塗料として使用されます。

焼付塗装に必要な設備や道具

焼付塗装は乾燥する時に100℃~200℃の熱が必要になります。
必要となる温度はメーカーや塗料の種類により異なります。

加熱する方法ですが専門のメーカーは乾燥炉という大きなヒーター付きの窯で加熱して塗装する物を一気に焼き上げます。

そのため細かい事を言うとヒーターの配置によって温度ムラがあるのですが、基本的には全体的に均一に仕上げる事ができます。

板金工場でやる方法として完成している自動車にはタイヤや樹脂パーツなど付いていて乾燥炉に入れるわけにもいきませんのでヒートガンや赤外線ヒーターなどを用います。

一度に広い範囲を均一に仕上げる事は出来ませんが、小さい物や範囲であればこれで十分です。
個人によるDIYでやる場合には同様でこれらの道具で問題ありません。

また、家庭用オーブンなどでも原理上は焼付硬化させる事は可能です。

焼付塗装の工程

乾燥工程で熱を加える事を除くと
自然乾燥による塗装方法と基本的には同じ工程になります。

①下地処理
 塗装を行う場所をきれいにしてシンナー等で油分を落とします。
 密着性を高めるために素材などに応じてサンディングする場合もあります。

②焼付塗装用の塗料を塗布
 スプレーガンにより均一に塗布します。
 作業性に応じてシンナー等の溶剤で希釈することが可能です。

③乾燥
 必要であれば100℃以下の温度で強制乾燥を行ってください。
 直ぐに焼付を行って希釈に用いた溶剤が泡立ち
 品質不良になることを防ぐ事が出来ます。

④焼付
 乾燥炉やヒートガン等で熱をかけます。
 必要な温度や時間は塗料のメーカーや種類により異なります。
 間違えると硬化不良を起こす事もありますので必ず確認してください。

⑤完了
 基本的にはこれで終わりです。
 塗料の種類にもよりますが重ね塗りが必要な場合は再度塗布を行ってください。
 鏡面仕上げなどの表面処理も焼付工程が完全に完了した後に行ってください。

自動車の塗装ラインも全部自動で下塗りとして電着塗装があったり3回の重ね塗りの工程はあるものの、基本的には同じ流れになります。

ラインの両側からドライヤーの様なものから120℃~180℃程度の温風が噴き出てきて約20分乾燥させています。

焼付塗装の特徴

「焼付塗装」の特徴として「自然乾燥」「強制乾燥」と比べて乾燥の時間が短いという事があります。

自然乾燥であれば完全に硬化するまで数日かかったり強制乾燥でも数時間が必要になる事があります。

それに比べると焼付塗装は数十分で完全に硬化するのでこれが一番のメリットと言えます。
ただし、充分な加熱をするために乾燥炉であったりヒートガン等の設備を必要とすることはデメリットな部分として言える事です。

見た目としては艶があり綺麗な外観に仕上げることが出来ます。研磨性も良く鏡面塗装にもよく使われます。リペア(補修性)も良くリコートも可能です。

焼付塗装のメリット・デメリット

様々な場所で使われて広く出回っている焼付塗装ですがどんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。

メリット

・硬化時間が短いため乾燥のためのスペースがいらない
・広い範囲や複雑な形状でも一定の品質に仕上げることが出来る

デメリット

・耐熱性がある素材以外には使えない
・加熱するための乾燥炉やヒートガンなどが必要になる

焼付塗装が出来る素材と出来ない素材

焼付塗装は100℃~200℃の高温で硬化させるためこの温度でも、変形しない素材である必要があります。一般的には鉄などの素材は焼付塗装が出来る素材でプラスチックや木材などは出来ない素材となります。

焼付塗装が出来る素材

  鉄、ステンレス、アルミ、真鍮

焼付塗装が出来ない素材

  樹脂(プラスチック)、木材、ビニール

この様に変形してしまう材料にはウレタン塗装やUV塗装等の光硬化系の塗料を使う事で同等の塗装は可能です。

自動車の生産工程における焼付塗装

自動車のボディにも焼付塗装が行われます。
下塗りである電着塗装が終わると自動コンベアで焼付塗装の工程に入ります。

塗装ロボットが2~4台程度で左右から焼付塗装専用の塗料を吹き付けます。
その際、ボディを-マイナスの電気に帯電させて静電塗装の原理でムラが無いように塗装していきます。

その後、コンベアが進んでいきオーブンへ行きます。
オーブンと言ってもドライヤーの様な温風の吹き出し口が左右にあるトンネルの中に進んでいき20~30分で160~180℃程度で乾燥を行います。

これを2回中塗りとクリアで行います。
一部、高級車などは中塗りが2回のクリア1回で3回塗る場合もあります。

塗料としては各メーカーの設備に合わせた専用塗料ではありますが一般で手に入る焼付塗料とそこまでの大差はありません。

塗料のメーカーに問い合わせれば同等の塗料が手に入るはずです。

参考HP:日本ペイント自動車補修用塗料

焼付塗装の天敵!?温度ムラ

一見すると塗料を塗ってオーブンに入れるだけで出来る簡単な塗装かと思いがちですが、実は難しい側面もあります。

それはかける温度のムラで品質に差が出てしまう事です。自動車の製造ラインではしばしばこれが問題になることがあります。

自動車が通過する乾燥炉の側壁に取りついている温風ヒーターですが上下方向に2か所しかなく吹き出し口に近い部分と遠い部分では最大で20℃程度の温度差が出てしまいます。

これが硬化具合に差をもたらしてあるところでは焼き過ぎて硬くもろくなってしまいあるところでは半焼きで柔らかくなってしまうという事が問題となります。

これに対応するためには乾燥炉の温度状態を一律に保つことも需要ですし、塗料メーカーと相談しながらより対応できる温度幅の広い塗料へ置き換えるなどの対策を行います。

まとめ

焼付塗装は塗装作業の時間短縮に極めて有効であり自動化にも向いている。

塗装したい物が同じ形状でたくさんある時には手間が省けるので有効な塗装方法です。
ただし、塗装したいものが少量の場合は2液硬化型のウレタン塗料を使うのも一つの手だと思います。

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