塗装にもいろいろ種類がありますがその中でもUV塗装というものがあることをご存知でしょうか?今回は塗装業界の中でもどちらかと言えば先進的なこのUV塗装という物を解説したいと思います。
UV塗装とは
UV塗装とはアクリレートと呼ばれる樹脂の材料となる物を主原料としたUV塗料に、
紫外線UV(UltraViolet Rays)を当てることで光重合反応と呼ばれる作用を用いて硬化させる塗装方法の事を指します。
他の塗装方法と比べると分子間の結合が強く最高でガラスに匹敵するほどの極めて硬い塗膜を作る事が出来るという特徴があります。
また、焼付け塗装や強制乾燥、自然乾燥などと比べて硬化時間が短いことや塗膜硬度が高いことが主な特徴になります。
光硬化樹脂の原理を塗装に応用したもので、塗装の用途以外では建築用のパテや虫歯予防のための歯の隙間埋め等に使われています。
また、紫外線以外の波長を用いる「光硬化」系の塗装もありますが特にエネルギー密度の高い紫外線領域を用いることでさらなる硬化時間の短縮を可能にしていることも特徴の一つとして挙げられます。
UV塗装は有機溶剤を使わない事から他の塗料よりも安全と言えます。そのため家庭用として使われることもありテーブルなどの家具やフローリングの塗装や、耐久性もあるため水回りの浴槽やキッチンに使われることがあります。
また、短時間で硬化することからネイルサロンなどで使われることも多くなってきています。
UV塗装の特徴
UV塗装は最高で9Hもの硬さを出すことが出来ます。
Hとは鉛筆硬度の事でその名の通り鉛筆の芯の硬さと比べてどちらが硬いかで表す方法になります。
家具やフローリングに使われるUV塗装の硬さは鉛筆の硬さで表す方法で表現すると5H程度で、最高でも3H程度である他の塗装方法よりも硬い表面を作り上げることが出来ます。
そのため、何かを擦った時やぶつけた時に傷が付きにくく熱や薬品にも強いため長持ちするいうところが最大の特徴となります。
ただし、塗料自体が硬化な事や特別な設備や装置が必要になる事から価格としては高くなることが多く長く使っていくうち万が一傷が付いたり剥がれたりした時には修理がしずらいという弱点もあります。
UV塗装のメリットとデメリット
そんなUV塗装にもメリットがあればデメリットがあることも確かです。
それを以下にまとめてみました。
●メリット
①光沢のある美しい見た目
②硬くて傷が付きにくい表面
③無臭で熱や薬品に強
●デメリット
①傷が付いた時に直すことが難しい
②価格が高くなりやすい
より詳しく解説すると以下の様になります。
メリット
①光沢のある美しい見た目
膜厚が付きやすく透明度も高いため他の塗装法と比べると高級感のある仕上がりになります。表面もフラットなためそのままでも鏡面塗装の様な仕上がりになります。
②硬く傷の付きにくい表面
実用的にも3H以上の硬さで仕上げられるので摩耗による傷にとても強い塗装になります。
熱や火、薬品にも強いのが特徴です。
③無臭で熱や薬品にも強い
塗装物が多少デコボコでも厚い膜が吸収して表面をフラットに仕上げられるため汚れを落としやすくお手入れが簡単です。また、たばこの火を押し付けても大丈夫なくらい熱に強い塗装になります。
デメリット
①傷付いた時に補修が難しい
一方で補修が難しいというデメリットもあります。これは塗膜が非常に硬いため補修の際に塗料を剥がすことが難しいということから起こる問題です。決して補修できないという訳ではありませんが作業をする際には高い技術力が必要になります。
UV塗装をされたテーブルで塗装が剥がれてきたので補修したいといった場合に難しいという事が良くあるようです。
塗装を一度剥がす方法としてはグラインダーやヤスリなどで剥がす方法やサンドブラストが必要となるため個人の方がDIYでやるのは少し手間がかかり困難かと思われます。
②価格が高くなり易い
UV照射の設備が複雑で大型になってしまう事が多いのと、UV塗料自体も入手先が限られていることから高額になり易く価格が上がる原因となります
参考サイト:光硬化性樹脂の基礎
UV塗装の用途
塗膜が硬く耐久性が高いことから人が多く使う場所など傷が付きやすい場所に使われることがあります。
商用ビルやマンションの共用部分などの建材や最近ではフローリングのワックス代わりに使われることがあります。
表面が硬いため汚れが付きにくいことから浴槽の塗装やキッチンのシンク周り、テーブルの天板に使う事もあります。
また、自動車修理工場でも早く仕上げる事が出来るため使っているメーカーもあります。
- エレベーターやマンションのドア
- 喫茶店やなど店舗のフローリング
- お風呂や洗面所、キッチン台
- テーブルの天板などの家具
UV塗装の工程
基本的な流れは焼付塗装など他の塗料と変わりません。
下地処理として脱脂や汚れを落とした後、スプレーガンで塗布して下さい。
UV塗料にシンナーなどの溶剤が元々入っている場合や希釈の為に入れた場合は塗布後に乾燥工程を入れてそれらの成分を飛ばしてください。
十分に揮発させないと曇りや泡の原因になります。
その後、UVを照射させることで硬化させます。
硬化したら完成です。
UV塗装に使う塗料
UV塗装に使う塗料はUV光を当てると反応して硬化する特殊な専用塗料を用います。
下記の商品は数少ない小売りして頂けるショップになります。ご参考までに
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一般的なUV塗料はUV-A波長で365nm長波長紫外線を用います。これは硬化させるための光源として利用される高圧水銀灯で多く放出させることから硬化開始剤がこの波長に反応するように調整されているためです。
UV-LEDなど他の波長を光源とする場合にはそれに適した塗料を選定する必要があります。
また、添加剤や顔料の種類により偏光してしまう場合や深部まで光が到達しない場合には波長領域の広いメタルハライド光源などを使うと良いでしょう。
UV光に反応する硬化開始剤が入っている必要があるので、他の塗料にUV光を当てたからと言って代用できるものではありません。
入手先も非常に限られています。一般的な塗料の問屋さんではあまり扱わないので入手するのに手間取るかもしれません。
当社では塗料の開発をしている建材メーカーさんに直接問い合わせて仕入れています。
開発品を分けてもらっているという表現が正しいかもしれません。
その位、入手に手間がかかります。
逆にそこまで品質にこだわらない様ならアマゾンや楽天で入手できない事もありません。
PU(ポリウレタン)塗装との違い
UV塗装とよく比較されるのがPU(ポリウレタン)塗装です。
ポリウレタン塗装は主剤の中に開始剤を入れてから塗布する2液型が主流で、UV塗装の様にUV照射器が必要ない事や、焼付塗装の様に乾燥炉が必要ないため塗装の作業としてはやり易い塗装となります。
それでいて、ある程度の硬さ(3H程度)までは出せるので良く使われる塗装方法です。
ただし、UV塗装よりは硬さが得られない事と硬化までに時間が掛かることがデメリットとして挙げられます。
塗装の種類 | 艶 | 硬さ | 補修性 | 価格 |
---|---|---|---|---|
UV塗装 | ◎ | ◎ | △ | △ |
PU塗装 | ◎ | 〇 | 〇 | 〇 |
UV塗装のお手入れ
特別お手入れの際に気を付けて扱う必要はありません。
他の塗装品と同じように取り扱って下さい。
汚れたら柔らかい布で吹くか汚れがひどい場合には中性洗剤などを使って汚れを落とせば大丈夫です。
深い傷などが入った場合には専門の塗装メーカーに依頼して研磨する必要があります。
UV塗装の補修
UV塗装の塗膜に大きな傷が付いてしまった場合は経年劣化などにより剥がれてきてしまった場合には補修が必要になります。
一部テーブルに施したUV塗装は補修が出来ないという話もありますが、基本的には樹脂ですのでそんな事はありません。ただ硬いので難しいというだけです。
UV塗装の塗膜を剥離するにはグラインダーやサンダー、サンドブラスト等を用いて行います。
一度、素地を出してから塗装をやり直します。
一部分だけの補修だと既に塗ってある塗料の種類によっては上塗りする塗料をはじいてしまう事もあり、補修することが出来ない場合があります。
まとめ
いかがだったでしょうか?
UV塗装は特殊な塗装方法ではありますが使い方によっては様々な可能性を持った塗装ともいえます。
最近の製造業では作る最中に発生するCO2の量にも注目が集まる中、
熱を使わずに光だけで硬化させられるUV塗装は今後さらに注目があつまる可能性のある塗装方法なのかもしれません。
使ってみたい方や設備を導入したいけどやり方が解らない方は気軽にお問い合わせ下さい。