こんにちはwithHOPEの塩原です。
今回は電着塗装についての解説です。電着塗装というと塗装の方法としては少し特殊で少し難しい印象を受けるのでは無いでしょうか。そんな少し難しい印象を受ける電着塗装ですが出来だけわかり易く解説していきたいと思います。
電着塗装とは
電着塗装(英語表記:Electrodeposition coating)とは、電着塗料という専門の塗料が入った水の中に塗装したい物を入れて電気を流して塗装を行う方法です。
塗装したい物とそれとは別の場所に電極を付けてそれぞれにプラスとマイナスの電気を流すことで塗料を付着させて塗装を行います。
塗料は水性で中に顔料と樹脂がくっついた状態で含まれており、この樹脂(樹脂ミセル)がプラスに帯電しているかマイナスに帯電しています。
塗装の効率が良く(95%以上)全自動化が可能で大量生産が可能だというところに特徴がある。塗料の突き周りが良く袋状の物にも均一の塗膜を隙間なく塗装することが出来ます。
塗装したい物に電気を流す必要があるため、プラスチックや木材など電気を流せない物などには使えないというのも特徴として挙げられます。
広義の意味で「粉体塗装」も電着塗装と呼ばれる事がありますがこちらは”静電塗装”と呼ぶのが一般的です。原理的にも大きく異なります。
参考文献:電着塗装の歴史と原理
カチオン電着塗装とアニオン電着塗装の違いとは
電気を流す方向、つまり塗装したい物を+プラスにするか-マイナスにするかで「アニオン電着塗装」「カチオン電着塗装」が決まります。
+プラスにするのがアニオン電着塗装で-マイナスにするのがカチオン電着塗装です。
アニオン電着塗装は塗膜と中和剤が弱アルカリ性で、カチオン電着塗装は塗膜と中和剤が弱酸性という違いがあるため設備が異なります。
また、アニオン電着塗装では金属の溶出が起こるという違いからも
塗装の対象物の素材や表面処理により用いる塗装の種類を選択する必要があります。
アニオン電着塗装ではポリブタジエン系樹脂、カチオン電着塗装ではエポキシ系樹脂を析出させて塗膜とすることが一般的です。
電着塗装の工程
電着塗装は大量生産に用いられることが多く、一般的には前後の工程も自動化されています。
前工程としては、水洗処理が上げられこれは読んで字のごとく水により金属の加工工程で付着した油や金属カス等を落とす工程になります。
水洗の前に脱脂工程や酸性溶液による洗浄工程が入る事も多くあります。
後工程としては、乾燥工程があります。
この工程により加熱して塗膜を硬化させるのと同時にワークに付着した水溶液を飛ばすことで塗装は完了します。
自動車に使われているのはカチオン電着塗装
一般的に自動車の下塗りにはカチオン電着塗装が採用されています。
これは袋状の部分が多く複雑な形状である自動車のホワイトボディへ満遍なく均一に防錆塗装をするという目的に一番合った塗装方法だからです。
もちろん量産性が良いことや塗料のロスが少ないということもあいまってほとんどのメーカーで採用されています。
日本のメーカーではカチオン電着塗装を用いることが多くこれは輸出が多い日本特有の状況に由来しているとも言えます。
以前はアニオン電着を用いていましたが船による輸送中に糸状の錆が発生する問題を多くあり、それを解決する過程でカチオン電着塗装に移行しました。
同時に亜鉛メッキ鋼板への意向が対策に含まれていたためどちらに効果があったのかは専門家によっても意見が違うところのようです。
電着塗装で使える色は?
電着塗装と言うと灰色や黒色など地味な色をイメージする人が多いと思います。
カチオン電着塗装では使える色が限られているため確かに灰色や黒色が一般的です。
最近では明るい色を出すことも出来るようになりましたがまだまだ使える色数は数種類です。
一方でアニオン電着塗装ではほとんどの色が使えます。
調色も可能なのでほぼ無限に色を表現することが可能です。
ただし、どちらの電着塗装でも1色につき1タンクが必要となるため色を変える作業には手間が多くかかります。
電着塗装のメリット・デメリット
電着塗装は他の塗装方法と原理的に大きく異なる事から際立った特徴をもっていると言えます。そのため比較すると特徴的な良い所と悪い所があります。
●メリット
①自動化が容易で大量生産に向いている
②塗料のロスが少ない
③袋状の物でも隙間なく均一に塗装出来る
●デメリット
①設備が大型で管理も複雑なため対応出来る会社が少ない
②色の切り替えが困難で表現力が低い
③段取りが多いため少量の塗装には不向き
この様に他の塗装方法とは大きく異なったメリット・デメリットがあるため使えると所は少なくなりますが、一定の条件下では大きな力を発揮する特殊な塗装と言えます。
電着塗装で起こる不良
電着塗装では一般的な吹き付け塗装と異なり様々な装置や設備を用いるため独特な不良が発生することがあります。
良く起こるのが水に入れる時に空気が入ってしまいその部分に電気が流れず塗装がされない「泡かみ」やワークを吊るすハンガーと電極の接触不良により十分な電気が流れず必要な塗膜の厚さが得られない「通電不良」です。
それ以外にも様々な塗装不良がありますので一つずつ原因を潰していき条件を整えることが必要になります。
まとめ
如何だったでしょうか?
難しそうに思える電着塗装ですが意外とシンプルな原理と構成では無いでしょうか。ただ原理はシンプルでも設備としては大型で複雑なため扱えるメーカーは限られてしまいます。情報としても少ないため調べようにも調べられないという事もあると思いますの。
何かお困りの際にはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡頂ければ幸いです。